2009/07/22

ubuntをインストールする~USBメディア編

ubuntuの第5回めです。
読み返してみるとずっと引っ張ってしまっているUSBメディアへのインストールの話にようやく到着です。

USBメモリとUSB外付けハードディスクにubuntuをインストールしてみました。
その操作方法、注意事項は全く同じです。ですので、USBメディアへのインストールとしておこうと思います。
ネットブックなど、光学ドライブのない機種の内蔵ハードディスクにUSBメモリを用いてインストールするためのUSBメモリの作成については第3回を参照してください。
今回の話題は内蔵ハードディスクと同様にUSBメディアを活用する場合のインストール方法です。

まずubuntuのライブCDでPCを起動します。この時、ubuntuをインストールしたいUSBメディアはまだ接続しないほうがよいようです。
少なくともわたしがインストールを試みた2機種では起動の前から接続してあるUSBメディアはうまく認識されませんでした。
ライブCDから起動後、USBメディアを接続します。自動的に認識、マウントされてデスクトップにアイコンが表示されます。
ここで「システム」→「システム管理」→「パーティション・エディタ」と順にクリックしてパーティション・エディタを起動します。
目的はUSBメディアに割り当てられるデバイス名を確認するためです。通常、内蔵ハードディスクは"sda"のデバイス名が割り当てられており、USBメディアには"sdb"などが割り当てられているはずです。
デバイスはフォルダ名として"/dev/sda"、"/dev/sdb"といった表現になります。対象のデバイスが複数のパーティションに分割されている場合、"/dev/sda1"、"/dev/sda2"のように数字が振られます。これは内蔵ハードディスクが分割されている場合の例です。
ファイルのインストール先は"/dev/sdb1"のようにパーティションを指定できますが、起動先の指定はパーティションではなくデバイスになります。
もし仮に、パーティション・エディタであらかじめ2つのパーティションに分割したUSBメモリの最初のパーティションへインストールするとして"/dev/sdb1"をインストール先に指定したとしましょう。その場合でもubuntuを起動するデバイスは"/dev/sdb"になります。

ここまで準備してから、USBメディアのアイコンを右クリックして「アンマウント」を左クリックします。マウントされているメディアへのインストールはできないからです。
デスクトップにあるインストーラを左クリックして起動します。指示にしたがって進めてください。
パーティション画面が出てインストール先が選択できます。そのまま進めると内蔵ハードディスクのWindowsを消してしまうことになります。
「ディスク全体を使用する」を選んで、先ほどの"sdb"などUSBメディアをインストール先に指定してください。普通に注意していれば、ここで操作を誤ることはあまりないと思います。

問題は「インストール準備完了」までたどり着いたときです。
ここですぐに「インストール」をクリックしてはいけません
右下にあまり目立たない感じで「拡張...」とあります。必ずそこをクリックしてください。起動先として"sdb"など、USBメディアを間違いなく指定してください。
それから「インストール」をクリックします。

わたしは最初、職場のPCで「拡張...」の意味がわからず、MBRを上書きしてWindowsが起動できなくなりました。同型機種でMBRをファイルにバックアップして、それを書き戻して復旧するハメになりました。

そんな経験があったにもかかわらず、自宅のノートPCでまたMBRを上書きしてしまいました。これは全くの油断でした。十分に操作方法がわかったつもりで、さっさと進めていて、そのままつい「インストール」をクリックしてしまったのでした。
ただ、先の経験があったのでMBRバックアップして別のUSBメモリに保存しておきました。なのでミスはしましたが、あわてずさわがず即座に復旧できました。
ぜひともubuntuのインストールはMBRのバックアップを作成してからはじめてください(第2回参照。シツコイようですが)。

こうしてインストールしたUSBメディアですが、なぜか、うまく起動できませんでした。
その話はまた次回にさせてください。

2009/07/20

ubuntをインストールする~内蔵ハードディスク編

ubuntuの話題も4回め。ようやくインストールです。
インストール前の注意(第2回)も参照してもらえれば、と思います。

結局全部で4種類のインストールを行ないました。
(1) Windowsマシンに、unbuntuをどちらでも起動できるようにインストールする(デュアルブート)
(2) Windowsを完全に消してしまってubuntuだけをインストールする。
(3) USBメモリにubuntuをインストールする(USBメモリからの起動)。
(4) USBハードディスクにubuntuをインストールする(USBハードディスクからの起動)。

ubuntuインストール用のライブCDをUSBメモリにインストールして、USBメモリからネットブックなどにubuntuをインストールできるようにする操作方法は前回取り上げました。

基本的にインストールそのものは特に難しくないと思います。基本的にインストーラ任せでした。
(1)(3)(4)の場合、インストール作業をはじめるまえに必ずMBRのバックアップを作成しておいてください。ここさえ押さえておけば、あとは結構なんとかなる、という感じです。
バックアップの方は第2回を参照してください。

(3)(4)のインストール方法は全く同じです。USBからの起動にいたる手順も同じでした。
結構重要な注意点については後述します。

まず(1)(2)についてお話ししましょう。通常の内臓ハードディスクへのインストールです。
Ubuntu Japanese Teamのサイト(http://www.ubuntulinux.jp/)からデスクトップ版のRimix CDのイメージをダウンロードして、ツールを使ってCD-ROMに書き込みます。くわしい方法はサイトに書かれています。
作成したCD-ROM(ライブCD)からインストールしたいPCを起動します。CD-ROMから起動する方法は機種ごとに異なるので、その機種のマニュアルを参照してください(なければメーカーサイトからpdfでダウンロードできるかも知れません)。

とりあえず、いきなりインストールするのではなく、少し操作をしてみてインストールしても支障なさそうなことを確認してみてください。
デスクトップの左上にインストーラのアイコンがあります。それをダブルクリックして起動、あとは指示に従ってください。
パーティションの画面で、Windowsを残してのデュアルブートか、Windowsを消してハードディスクすべてを使うかを選ぶことになります。
(1)(2)の違いはそこだけです。

結局、職場の古いノートPCはデュアルブートをやめて、ubuntuマシンにしてしまいました。
理由はubuntu向けのハードディスク容量を十分に確保できなかったためです。動作環境を押さえてインストールに望まなかった自分のミスでもあります(第2回参照)。
それ以外に起動や動作においてデュアルブートの問題には直面しませんでした。
何度も繰り返しになりますが、MBRをバックアップしてあればWindowsマシンへの復帰も可能なはずですので、試しにデュアルブートにしてみるというのもありかと思います。
ただ、興味のある方のみ、自己責任で。
ubuntuは思っていた以上にlinuxの知識がなくても動かせてしまいます。GNOMEのユーザインターフェイスもWindows的でわかりやすいと思います。
でも、やはり誰でもみんな、というわけにはいかないとも思います。

USBメディアへのインストールの話をしようかと思っていたのですが、次回に回します。

先ほど、気づいたのですが、blogram.jpで自動的に音楽カテゴリに判定されるのは、「ライブCD」だけでなく「Remix」もひっかかっているんでしょうね。
そういう勘違いも楽しいといえば楽しいです。

2009/07/18

ubuntu、USBへの2種類のインストール

職場の古いノートPCにubuntuをインストールする作戦はデュアルブートにしてみて、動作環境を無視してしまったこと、特にハードディスクの空き容量の点で結局うまくいきませんでした。
……このubuntuインストールの話題、第3回めです(12もあります)。

Windowsを消してしまって完全にubuntuマシンにするということを考えつつ(結局そうするのですが)、試しにUSBメモリのubuntuを作成してみることにしました。
単純に動作環境として4GB必要なら、今手もとに8GBのmicroSDが余っているよ、容量的には大丈夫だよね、という発想です。
USBメモリでコンパクトに自前のOS環境を持ち運べるなんて、Windowsじゃありえないじゃん、という気持ちもありました。

この段階で見落としていたことがあります。
くだんのノートPCを含め、古いハードウェアはUSBメディアからのOS起動には対応していないようだということです。
わたしは手軽にUSBメモリから起動できることを期待していました。実際はCD-ROMから起動するようなわけにはいかないようです。

そのあたりの話に入るまえに、ubuntuをUSBメモリにインストールする方法は2種類あります。

(1) USBメモリをハードディスクとして、ubuntu環境を構築する。
(2) 光学ドライブを装備しないネットブックなどで、ライブCDのかわりにUSBメモリから起動できるようにし、必要ならばUSBメモリからネットブックにubuntuをインストールする

上記でわたしが期待していたのは(1)になります。USBメモリだけから手軽に起動できるものです。
ライブCDはインストール時をふくめ、一時的な環境で継続的に使用する環境ではありません。起動後もCD-ROMを読みにいくので動作が遅いです。
(1)の環境はハードウェアがUSBブートに対応していなければなりません。古いハードではなかなか難しいようです。

(2)の環境もUSBブートへの対応は必須になりますが、ネットブックへのインストールという主な目的で考えれば、対象ハードは対応していると考えていいでしょう。
ネットブックの場合、CD-ROMから起動するにしてもUSBブートにならざるを得ないわけですから。

(2)のUSBメモリへのインストールは、ライブCDから起動して、画面上部のメニューの「システム」→「システム管理」→「USBスタートアップ・ディスクの作成」とクリックします。
この際にも第2回に書きましたようにMBRのバックアップをとってからはじめることをお勧めします。

インストールに際してUSBメモリの内容はすべて消去されます。
また「データ保存領域を確保し、行われた変更を保存します」をチェックして容量をしてすることで、保存領域が作成できます。ここがライブCDとは違うところですね。

なんだか話がズレてきれしまいました。
(1)のUSBメモリへのインストールの話は次回に。

ところでblogram.jpというサービスに登録してみました。自分でブログ紹介を書かなくても成分分析をして自動でカテゴリをつけてくれます。
重要度順に複数つけてくれるのですが、最後に「音楽」のカテゴリが含まれています。
音楽の話題なんてしてないのに……と思ったのですが、どうも「ライブ」と「CD」のキィワードからのようです。
とりあえずCD-ROMと書いたほうがよいところはそうするようにしました。でもライブCDなんですよね。

2009/07/16

ubuntuのインストールまえに必ずやっておきたいこと

おそらく今回のubuntuインストールでこれ以上の教訓はないと思うのですが、Windowsマシンでubuntuをインストールする前には
必ずMBRのバックアップをとっておく
ことです。

WindowsマシンからWindowsを消去して完全にubuntuマシンにしてしまうというのであればバックアップの必要はありません。
1台のパソコンでWidonwsとubuntuの両方を使うデュアルブートの場合はもちろん、そのパソコンのハードディスクにubuntuをインストールせず、別のUSBハードディスクやUSBメモリにインストールして、そのUSBから起動したいという場合であっても、MBRのバックアップをとってからインストール作業に入ってください。

実際わたしはUSBメモリへのインストール作業で、2回、MBRを消しました。
その2回めはバックアップがあったので、あわてずさわがず、すぐに復旧できました。

MBRって何? という話もあると思います。
Master Boot Recordの略で、ハードディスクからOSを立ち上げる時に参照される情報で、変更されたり壊れたりするとOSが立ち上がらなくなってしまうわけです。

このMBRの修復方法をweb検索してみると、
「Windowsの回復コンソールを立ち上げて、fixmbrを実行する」
という回答が主流です。確かにそのとおりなのだと思いますが、「回復コンソール」というやつがクセモノでほとんどの方はお手元にないのではないかと思います。
購入時にWindowsがプレインストールされているモデルには「回復コンソール」はついていなかったように記憶しています。

職場のXPパソコンでUSBメモリへのインストールを試して、あやまってMBRを上書きしてしまいました。これが上述の2回中の1回めです。
「回復コンソール」を起動できるCDが付属しているのですが、fixmbrは実行できませんでした。CDに含まれていないようでした。
結局、全く同型機種があるので、そちらのMBRをバックアップしてファイルに保存、それを上書きしてしまったパソコンに書き戻すという方法で復旧しました。

2度めは自宅パソコンでのインスール操作をミスって上書きしてしまいました。事前にバックアップを取ってあったので即座に復旧できました。

前置きが長くなりましたが、バックアップの方法です。
ubuntuのライブCDからパソコンを起動します。CDからの起動方法は機種によって違うのでマニュアルを参照してください(マニュアルをなくしていてもメーカーサイトからダウンロードできたりします)。
「アプリケーション」→「アクセサリ」→「端末」とクリックして、windowsでいうところの「コマンドプロンプト」を起動します。
キーボードから
sudo dd if=/dev/sda of=/home/ubuntu/mbr_backup bs=512 count=1
と入力してEnterを押してください。保存先は「場所」→「ホーム・フォルダ」で見つかります。USBメモリなどにコピーしてください。

バックアップを書き戻すときは、バックアップしたファイルを「ホーム・フォルダ」にコピーしてから「端末」を起動して
sudo dd if=/home/ubuntu/mbr_backup of=/dev/sda bs=512 count=1
と入力してEnterを押します。

この方法をweb検索で見つけたとき、sudoは書かれてかれていませんでした。suはスーパーユーザのことで一時的に権限を拡大してコマンドの実行ができます。

USBハードディスクなどにインストール際は操作ミスでMBRを上書きしてしまう可能性があるので、そのためのバックアップです。
Windowsとubuntuのデュアルブートの際にもバックアップを取っておいたほうがいいでしょう。
2つのOSを起動できるようにするわけですから、MBRは変更されなければなりません。

問題はデュアルブートにしてから、その後、やっぱりubuntuはやめようということになった時です。
作業としてはubuntuをインストールしたパーティションを解放することになるのですが、その際、MBRは書き戻されません。
結果、ubuntuはもちろんWindowsも立ち上がらなくなるそうです。試してませんが。
その場合でも、Windowsが正常に起動していた時のバックアップがあれば上述の操作で復旧できると思われます。

これからのわたしの体験談はダメな話です。
職場の古いノートPCにubuntuを入れてみようということで、ライブCDで起動してみて成功しました。
翌日、デュアルブートならさほど問題あるまいとインストールしてみることにしました。
インストーラの指示に従っただけで、簡単に終了。Windowsとubuntuを選んで起動できることも確認できました。
Windowsのほうで業務をこなして、その翌日、ubuntuで起動してみるとアップデート・マネージャーが自動で起動しました。そしてアップデートのための200MBに満たないハードディスクの空き容量が不足していると表示されます……

すみません。動作環境を無視したのはわたしです。
最初にubuntuを入れようかとサイトで動作環境を確認した時、メモリ256MB
以上、インストールには384MB、ハードディスク空き容量4GBとあるのを見ていました。

くだんのノートPCはメモリ256MBです。ハードディスク空き容量はWindows上では6GBありましたが、インストール時のパーティション設定画面で表示されたのは2GBほどでした。
「でも、インストールできちゃったじゃん」……結局ダメでした。動くことは動きましたが実際的ではありません。
Ubuntuを削除しようと調べて、デュアルブートでUbuntuのパーティションを解放するとWndowsも起動できなくなることがわかりました。
何らかの方法でMBRも戻さなければなりません。Windowsを消そうかどうしようか迷いつつ、業務をこなしつつ、とりあえず試しにデジカメ用の予備に買っておいた8GBのmicroSDにインストールしてみようと思い立ちました。
上記のようにMBRを上書きしてしまうことになるのですが、つづきは次回。

ubuntuに興味を持った未経験者がインストール前にここに迷いこんで同じ失敗をすることを避けられたら幸いです。

2009/07/15

ubuntuはじめました

梅雨も明けて夏ですね。
「冷やし中華はじめました」な感じで「ubuntuはじめました」。これもubuntuから打ってます。

きっかけはどうやらVistaより軽くなるらしいWindows7の発売日程が決まったことでしょうか。
現在の職場に移って5年め、最初に支給されたノートPCをまだ使っているのですが、おそらく7年は使われてます。
2年ほど前にハードディスク交換をしてるので、もう少し使ってもいいかな、と。軽くなるったってWindows7は無理だよね、とは思いつつ、Windows7 Update Advisorを動かしてみる。当然、ダメですね。
linuxにしたらいいかな。今どき、linuxならubuntuが無難だろうな、と。

思えばVistaの発売がせまっていたころ、別にVistaはほしくないから、iMacでも買おうかな、と思ったり。でも価格と性能のバランスで決断にはいたらなかったように記憶してます。 
今回ubuntuということで新OSに切り込んでいくことになりました。

Ubuntu Japanese Team(http://www.ubuntulinux.jp/)のサイトからRimix CDのイメージをダウンロードして、CDから起動できるライブCDを作成します。
くだんの職場ノートPCをライブCDで起動すると、無事にubuntuが立ち上がりました。まずはデュアルブートでインストールしたのですが、いくつかの障害にぶつかります……

ubuntuのインストールやその後の環境づくりは想像していたより難しくありませんでした。
とはいえ決して簡単とはいえず、誰にでも勧められるものではないな、と思います。
以前の職場で「とりあえずは誰にでもパソコンが使えるようにしたというマイクロソフトの功績は無視できない」というひとがいましたが、確かにそのとおりかも知れません。

正直、まったく不勉強のまま、問題にぶつかるたびにweb検索で対処策を探っては手探りで進めているubuntuです。
インストールをお勧めするものではありませんが、興味があって、同じような問題にぶつかっているひとの参考になれば、とインストールの経緯を備忘録的につづっておこうと思います。

今日のところは、前フリということで、このへんで。

ところで、ずっと更新をしてきませんでした。9か月ぶりになります。
あるテーマを決めて、事前に文章を準備しておいて更新再開とも考えていたのですが、その準備もあまり進みませんでした。
4月にWiredの記事をネタに単発で書いてみたのですが、あまりに当然のことしか書いていないので掲載の意味はないか、と公開をやめました。
5月に、人生のなかでメッタにないことなのですが、精神的に傷つけられることがあって立ち直りに時間がかかって、ようやく回復してきたところです。他人の評価ってほとんど気にならないので傷つくことってほとんどないんですけどね。
ubuntuの立ち上げも気持ちの回復の最後の仕上げに大きく寄与してくれたと思います。

このサイトとの関連づけをどうするか決めてないですが、ubuntu活用で新しいサイトをはじめようと思ってます。その話はいずれまた。

2008/10/13

空回りの空騒ぎ~2008年度ノーベル賞

今年度のノーベル物理学賞、化学賞で計4人の日本人受賞者という話題で世のなか、盛り上がっているというか、空回りしているというか。
なんだか違和感を感じていたのだけど、そこらへんをカッチリと書いてくれている記事を紹介します。

日本にノーベル賞が来た理由・幻の物理学賞と坂田昌一・戸塚洋二の死
~伊東乾の常識の源流探訪 : Nikkei Buisiness Online
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20081009/173322/

このサイト、会員登録をしないと読めなかったりするんで、ざっと問題点を整理すると、今回の2002年の受賞者、小柴昌俊氏の後継者にノーベル賞を授与し損ねたということの挽回的な面が指摘されていて、それだけでなく南部陽一郎氏や下村脩氏を日本の研究者と位置づけることに疑義を呈しています。
その過程で日本人が関わった素粒子論研究についてきっちりとおさえていて、普通のTVニュースや新聞報道からは読み取れない事実関係が記されています。
ノーベル財団は授与すべき業績を持つ日本人が死んでしまったことで(ノーベル賞は死んだひとには授与できない)、その成果への授与の記録を残せなくなってしまった。その挽回の意味もあって、87歳という高齢の南部陽一郎氏を選出した。
そして、伊東乾氏は、物理学や化学でないもっと広い分野で立派な業績を残しているひとがたくさんいることを指摘しつつ、この日本の盛り上がりを「後進国根性」と記してます。

まあ、ぼくの違和感はそういった根拠のある正当なものではないんですが。
今回の受賞の街頭インタビューで、「日本人、やっぱりすごい」みたいなことをみんな云うんだけど、どれも昔の業績じゃん。
確かに受賞者はそれに値する立派な科学者なのだと思うのだけど、彼らが育ってきたような土壌を今の日本はすっかり失ってしまっているんじゃない? それを思ったらよろこんでいる場合じゃないでしょう。
今朝のニュースで今回の受賞で科学への関心が回復みたいなことを言っていたけど、今だけの気分の話でしょ。
もはや工業生産では世界をリードできないのだから、徹底的な知的集約でしか先進国として生き延びる道はないのではないかと思うのだけど、どうでしょう。
……それは、アニメやゲームの輸出ではないと思うんだよね。

と、まあ、偉そうなことを書いてしまったのだけど、それでは何をするべきなのか、自分に何ができるかとなると、う~ん、何もないなぁということになるわけで、空回り、空騒ぎをしているのは、ほかならぬ自分自身だったわけなのです。反省。


2008/10/06

Renaissance、そして20周年~アードベッグ・ルネッサンス

ルネッサンスといっても、乾杯ではなく。でも、お酒の話。

まもなく20周年を迎えるお店で飲ませていただいた。残念ながら20年通えているわけではない。
20年に追いつくにはまだ2、3年かかる。そのころにはお店も2、3年を重ねていて永遠に追いつけない。
時間というのはそういうもので、2、3年という距離がだんだんと小さくなっていくのを待つしかない。長くつきあうのが大切ということになるのだろうか。

スコッチウィスキーのシングルモルトで著名な銘柄のひとつ、アードベッグ。
身近にいる酒飲みのあいだでは軽く「クサい系」と呼ばれている。この系統のお酒をはじめて紹介してくれたひとは「クレゾールくさい」と表現していて、上述のまもなく20周年の店で知り合ったひとは「歯医者のにおい」という。英文で検索してみると"medicinal"と表現されるので、どのような匂いなのかはおおよそ想像がつくと思う。

特に深い理由はないのだけれども、もともとアードベッグはほとんど飲まない。「クサい系」としてはじめて口にしたのがラフロイグで、主にそちら飲む習慣になっている。検索でバーを探すとき、ラフロイグ10年にいくらの値づけをしているかで、その店の価格帯の手がかりとしている。ラフロイグの値段はしばしば書かれているが、アードベッグが明記されていることは経験的に少ない。

そのアードベッグが10年まえの1998年に蒸留したものを熟成させた。
6年熟成を「ベリーヤング」、8年熟成を「スティルヤング」、9年熟成を「オールモストゼア」として順次発売し、10年熟成を「ルネッサンス」と命名して発売した。
ネーミングとしては「オールモストゼア」がなんとも洒脱で秀逸。「ルネッサンス」は集大成としての自負と、完結ではない未来への展望の含意か。
昨年「オールモストゼア」の個性に魅力を感じたものの、結局「ルネッサンス」のバランス感覚に落ち着いてしまった自分が、なんともくやしい。わかりやすいオチに自らはまりこむのは居心地が悪い。そんなことを感じつつ、「ルネッサンス」をふたたび味わった夜だった。

ところでとなりのマーテルは「ルネッサンス」のまえにカクテル、ヤングマンをいただいた名残。ヤングマンからルネッサンスへの連携。別に意識していたわけではないのだけど、ゆるやかにアードベッグのテーマをたどったことにはなるのか。あるいは無関係か。

この店がこの街にオープンした20年まえ、この街に通うようになった。そう思うと、自分にとっても20周年であり、奇しくもマスターとは同い年だ。
20年まえ、ベリーヤングというほど若くはなかった。20年後の今、よい意味でも悪い意味でもスティルヤングなところがあるように感じる。いつかオールモストゼアとなるのだろうか。そしてルネッサンスははるか彼方であろうし、そうあってほしい。まだまだスティルヤングと思いたい。

いずれにせよ、永遠に縮まることのない距離を埋めるために、これからも年数を重ねていくのだろう。